【感想】【BL漫画】 たなと 『スニーキーレッド』~殺伐暴力から芽生えるのんびりとした生活~

スニーキーレッド (Feelコミックス オンブルー)

スニーキーレッド (Feelコミックス オンブルー)

殺伐とした始まりから、ほんのりとした愛が芽生える瞬間が好き。
男女であろうが、女女であろうが、殺伐とした愛って萌える。それが、男男だと、暴力が交わったりして、ドキドキする。
ついでいえば、猛獣っぽい攻めと、気圧されながらも懐柔しちゃう受けが好き。

そんなことを思っていた矢先のたなと先生『スニーキー・レッド』です。
とりあえず、ボコり愛が好きな人は、こちらの試し読みへどうぞ。

【大注目新人】たなと先生[スニーキーレッド]お試し読み【10/25発売】|onBLUE編集部BLOG
「とんだ変態野郎じゃん」

平凡なフリーター・三崎は
タチの悪いヤンキー・釧路に執拗に狙われる日々を送っていた。
会えば顔が腫れるまで殴られ、ウンザリするばかり。

しかしその一方で、三崎の体は
釧路からの暴力で興奮に震えるようなっていく……。
そんな三崎の変化に気づいた釧路は、ある日彼を暴力的に犯して――?

ドSヤンキーとドM平凡のボコり愛ラブ!

このあらすじで、この帯ですよ。即購入しました。
あらすじ以外で言うと、攻め(ハル)が「年下」なのが、すごくツボでした…!!暴力ふるったり、相手の家に押しかけたりしちゃうのに、受け(三崎)に「さん」付けで、仲良くなるにつれて、敬語を使うようになるんですよ……。しかし、その微妙な気の遣い方をまったく察してくれない三崎さん。猛獣が、天然猛獣使いにあやされてしまっているわけですね。


ここからは、ネタバレもいれつつ、軽く感想を。
ヤンキーっぽさを振る舞うハルが、「なぜグレてしまったのか」を、直接的に描かれないんですよね。家庭環境であったり、大学の環境だったりは描写されるけれども、それらは、ストレスの溜まる対象でしかなくて、排除しても、遠ざけても、彼のフラストレーションを解消しえない。ハルは、ヤンキー仲間のことが好きでつるんではいるんだろうけれど、大学にいなければ、とも考えていたと思うんですね。だから、課題も真面目にこなすし、引っ越し資金を貯めている。彼は、グレているのでも、自分の将来を放り出しているのでもなく、ただ、ヤンキーと優等生の壁に挟まれて、「ストレスが溜まっていた」のではないかなと。

「いい子」じゃないと、輪に加えてもらえない。
「ヤンキー」でないと、仲間ではない。

そんな板ばさみの中で、出会った三崎は異色の存在だった。まともな社会に属して、真面目な人たちの中で働き続けているにも関わらず、暴力的な行為に目を輝かせて、期待してしまう。そんな彼の許容範囲の大きさに、彼は自分の居場所を見出すことが出来た。愛称で呼ばれて、抱きしめてもらうことを、ハルは、ずっと求めていたように思うんですね。ひとりの青年のストレスが解消され、救われていく様が、暴力を伴いつつも、緩やかに描かれていく。

殺伐としたボコり愛から、穏やかなボコり愛までを描いた『スニーキーレッド』。とても面白かったです。