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【感想】面白さに裏打ちされた過酷さと温かみを知る『アニウッド大通り』

 アニメが好きだ。
 キャラクターが好きで、彼ら、彼女らが生きる世界観が好きだ。そこから飛び出る台詞ひとつに人生を、魂を揺るがされる。この世のどこかにあるかのように物語を扱うアニメファンたちは、なぜか時折「作り手」の話をする。漫画やアニメを現実以上に愛しているにも関わらず、それらは創作にすぎないということを再確認するような行為だ。なのに、しぶしぶではなくとても楽しそうに生き生きと語る。もちろん、敬意をはらうという意味もあるだろう。でも、それ以上にこんなことを思う。

 漫画やアニメが好きな人間は、「面白さ」にあらがえない。そして、作り手の人生という物語もまた例外ではない。
 物語と同じように、誰もを引き込み、魅了する情熱と才能、そして、くすりと笑ってしまうような滑稽さが創作者にもある。だから、ふとした創作者のエピソードにファンは奮い立つような気分にさせられるのだ。

『アニウッド大通り』は、作り手の魅力をこれでもかというぐらいに見せつけてくれる。
本作は、『機動戦士ガンダム』や『超時空要塞マクロス』など、メジャーシリーズが次々と出てきた80年代(ビデオの普及と共に初のOVAも誕生している)を舞台とした、新進気鋭のアニメ監督とその家族の物語だ。「オタク版三丁目の夕日」と銘打たれており、当時の雰囲気ならではのマニアックなネタから今でも通用するオタクネタが盛りだくさんとなっている。
 エンターテイメントが日々めまぐるしく変化していく賑やかな雰囲気に隠れてはいるが、家族の日常は決して順風満帆ではない。どうやら家計はあまり芳しくなさそうであるし、一家の大黒柱(?)たるお父ちゃんは、一度アニメ作りに没頭したら現場から帰ってこない。それでも、お父ちゃんや子どもたちの面白さを作る試みやおかたんの度量の深さに明るい家庭が支えられている。本作に感じる絶妙なバランス感と魅力はそこにあるのではないだろうか。

 お父ちゃんこと真駒監督は身体をガタガタにし、重たい足を引きずりつつも作品の完成へと突っ走る。その深さと暗さには畏怖すら感じられる。なぜ、そこまでしてアニメを作らなければならないのか。
 冒頭にあげた漫画アニメファンと同じだ。彼もまた「面白さ」を求めている。そして、自身の子どもたちにその「面白さ」とは何かを見せたいのではないか。

 父のアニメ作りのせいで、家族は一般的な幸せから遠のいている。しかし、父の創作によって、家族は常に面白さに身を浸している。
 だから、読者は真駒一家から目が離せない。どこにでもあるような日常を面白おかしく過ごさせる力が創作にはある。漫画やアニメを日々楽しむ人々には当たり前で、わかりきったことだ。それでも、何度でも噛みしめたいことなんだと、『アニウッド大通り』を読んでいると思う。