【感想】『魔法科高校の劣等生』原作既読ファンが紹介する、原作補完としての『魔法科』SS

今回は、『魔法科高校の劣等生』の二次創作SSを紹介します。
今放映中のアニメだけではわからない『魔法科』原作の魅力が存分に詰め込まれ、わかりやすく咀嚼されています。
現在、Pixivとハーメルンの2つのサイトで公開されているようですね。ハーメルンは、ルビ付きなので、こちらの方がオススメです。
魔法科SSシリーズ
イラストコミュニケーションサービス[pixiv(ピクシブ)]

こちらのSS、原作未読でアニメだけ視聴している方や、原作をまだ全部読んでいないという方もぜひ読んでほしい!ということで、少しばかり解説をしたいと思います。
と、その前に少しだけ深雪さんのビジュアル面について。原作版の深雪さんは、「その場にいるだけで注目を集めずにはいられない」「稀有な美少女」です。九校戦編では、その美しさと圧倒的な魔法力から男女問わず熱心なファンを獲得し、会場中を魅了するのですが、アニメ版ではそういった描写がほとんど削られている上に、「美しい」というよりは、「可愛い」なんですよね。原作版読者としては、かなり物足りないですし、あのビジュアルでこれから紹介するSSを読むと、違和感を覚えるかもしれません。
どれぐらい違うかというと、魔法科、特に深雪さんの熱烈なファンのSBSさんが描かれたイラストを拝見するとわかりやすいです。

正直、右側の「理想の深雪さん」の方が、原作小説のイメージに近いですね。

こちら「動く深雪さん」も、蠱惑的でドキドキしますね。初めて見たとき、「そうだよ!深雪さんは、おしとやか、かつ控えめな(だけど、美しすぎて逆に色気が漂う)微笑みを浮かべるし、一方で、お兄様に対して、小悪魔的な上目づかいをするお人なんだよ!!」と納得感しかありませんでした。
深雪さんは、常人離れした艶めかしい美しさを持ちつつも、高校生なりの幼さや可憐さも持ち合わせているお方で、でも、その年相応さが垣間見れるのは兄関連のことだけ。それが、ギャップになって、彼女の神秘的な美しさに深みを与えていると思うんです。

閑話休題
まずは、原作も交えて、個人的にオススメの読む順番を。(アニメで追っている方も同様に読んで問題ないかと思います)
特に年齢制限などはかかっていないですが、性的表現がやや濃い作品もあります。苦手なジャンルがある方は、ページの前書きを参照していただければと思います。

入学編上下

魔法科SSシリーズ - 1. いつまでも初恋のときめき

魔法科SSシリーズ - 4. 無防備な妹
こちらは、入学編時点での深雪さんと達也さんのお互いへの心情を細かく書いてあるので、原作補完として読めるSSになっています。原作を読む前に予習として読んでもOKかも。

九校戦編&夏休み編+1

魔法科SSシリーズ - 3. ある一人の犠牲者について
深雪さんにベタ惚れしてしまった一科生の話。『夏休み編+1』の「会長選挙と女王さま」を踏まえると、よりわかりやすいと思います。
魔法科SSシリーズ - 6. 好きな人の欠点
美人描写に定評のある魔法科の中でも、「主要メンバーの中では普通」「ある程度整った顔立ち」と称される達也さんの見た目について、深雪さんがどのように思っているのかが書かれています。
達也さんの見た目に言及しているのが九校戦編なので、こちらに追加。入学編以降に読んでもいいかもしれません。

横浜争乱編

魔法科SSシリーズ - 2. 一番大切なひと
入学編の後に読むのもいいけど、司波兄妹の素性と達也さんが「劣等生」と称される事情がネタバレに引っかかるかも。気になる人はここまで読んだ後に。

追憶編

魔法科SSシリーズ - 「私もブラザー・コンプレックスなんです」「え……?」
魔法科SSシリーズ - 押しの強い妹【深雪×達也】
深雪さんが、お兄様への愛を認めるようになるまでを描いた追憶編を読んだあとは、中学生の頃の深雪さんのお話をぜひ。時系列としては、ちょうど追憶編後から入学編にあたるかと。
追憶編読んだ後は、こちらだけでなく上で紹介した4本を読み直すのもありだと思います。
魔法科SSシリーズ - 私への嫉妬【真夜×深夜】
そして、文庫版についている短編「アンタッチャブル―西暦二〇一六年の悪夢―」に感じ入るところがあった人は、ぜひこちらも。四葉当主・四葉真夜と、その姉であり司波兄妹の母・深夜の艶ある話です。

来訪者編

魔法科SSシリーズ - 深雪「リーナ! 夜のお勤めでは、ちゃんとお兄様を満足させているのでしょうね?」リーナ「……」
魔法科SSシリーズ - 好かれると可愛い【深雪×リーナ】
来訪者編に出てくるアンジェリーナ・クドウ・シールズ、通称・リーナと深雪さんの話。こちらは、劇中数年後の設定だそう。

ダブルセブン編

魔法科SSシリーズ - 5. 本当は冗談じゃないと思う
2年度編のクラス替えなどのネタバレあり。気にならなければ、『入学編』以降読めるかと思いますが、ほのかが好きな人は、『来訪者編』まで読んだあとに。

メインの深雪さんと達也さんをめぐる関係についてのSS紹介は、こちらの記事が詳しく書かれています。
続・『魔法科高校の劣等生』の司波達也・深雪兄妹の異常性について(原作小説最新巻まで既読のファン向け) - 【蝸牛の翅(かたつむりのつばさ)】

なので、今回はこちらのSSを紹介。
魔法科SSシリーズ - 深雪「リーナ! 夜のお勤めでは、ちゃんとお兄様を満足させているのでしょうね?」リーナ「……」
魔法科SSシリーズ - 好かれると可愛い【深雪×リーナ】
深雪さんとリーナの関係について、書いていこうかと。未読の方のために、ネタバレはなるべく伏せてあります。

深雪さんといえば、最強魔法師にして、魔法科屈指の美人ヒロイン。しかし、それゆえに、彼女と張り合える魔法力や美貌を持ち合わせた同年代の女の子はいなかったんですよね。ほのかや雫のような突出した魔法力に優れた子や、エリカのような魔法での実践に優れた子はいるのですが、総合力でいえば、深雪さんがひとり勝ちの状態でした。

そこに彼女のライバルとして登場するのが、一校に留学してきたアンジェリーナ・クドウ・シリウスです。彼女は、深雪さんが特に得意としている魔法コントロール力でも、引けを取らない魔法力を持っています。その上、リーナは、その魔法力だけでなく、美貌さえも深雪さんに匹敵しているんですよね。
そんな完璧な美貌と卓越した魔法力を持ち合わせるリーナの最大の魅力は、その実力とは裏腹な(?)「チョロさ」。素直で顔に出やすく、達也さんや深雪さんに良いように扱われてしまうんですよね。彼女の来歴からすれば、それなりに修羅場をくぐってきてはいるはずなのですが、達也と深雪さんの前では、年相応のスクールガールに。兄妹に対して、魔法力では決して引けは取っていないのですが、その真っ直ぐで義理堅い性格でいいようにされてしまう。

魔法の実力は拮抗している二人ですが、普段のやりとりとなると深雪さんの方が余裕あるんですよね。最後の方のからかい方とか、かなり手馴れているんですよね。短い期間しか一緒にいないのに。それこそ、半年以上一緒にいるエリカやほのかと同じぐらいの気安さがある。これは、お互いをライバルと認められるほどの力量を持っているからなのかなと。

あるシーンで、達也さんはリーナに、「何かあれば力を貸す」というような声をかけています。自分と似た境遇だからという以上に、同じ境遇にいるにもかかわらず、自分のような強かさを身に着けられない不器用なところやその性格を買ってのものだと思うんですよね。

それは深雪さんも同じで、素直にリーナを認めて、兄の手を取ってほしいと願っているわけで。深雪さんって、真由美や摩利のような自分と違う色気やかわいらしさを持った女性が兄に近づくと嫉妬心を見せますが、自分と同じぐらいの美しさを誇るリーナにはあまり嫉妬している様子が見られない。
リーナを対等なライバルとして見ているからこそで、リーナのことを懐に入れてしまっていることが伺える。自分と重ね合わせて見ているかもしれないですね。それこそ、「鏡を見ているような」、それでいて、「兄を見ているような」。

兄の同じ境遇にいる者への気遣いと、妹の兄とライバルへの執着心と好意を増幅させたのが上に紹介したSSです。なので、リーナ好きで、SS前書きにある注意が気にならない方にはとてもオススメです。
正直、魔法科で一番美味しい組み合わせって達也さん×深雪さん×リーナだと思うんだ。

というわけで、簡単な形ではありますが、深雪さんとリーナについての紹介でした。

『魔法科』の魔法解説も読みごたえあるので、手を出し始めたばかりの方や原作既読者の原作理解を深めるのにオススメです。
「たぶん詳しくわかる魔法科高校の魔法解説(仮)」/「魔法科SS」の小説 [pixiv]
「たぶん詳しくわかる魔法科高校の魔法解説 2」/「魔法科SS」の小説 [pixiv]

今回紹介したSSは、原作補完としても読めるものがとても多く、『魔法科高校の劣等生』原作小説ファンとしては、毎回とても楽しく読ませていただいています。こういう視点もあるのかー!と納得させられることも多々あります。本当にオススメ。
今後の更新もとても楽しみです。