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【漫画】【感想】『四月は君の嘘』~空白のあと、音が視える幸せを体感しながら~

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)

妖艶で力強い彼女の後姿に息を呑んだ。
漫画の最大の弱点の一つを克服している。
音が視える。
森川ジョージ

空白。驚き。情報洪水。
創作の受け手としての私たちが、その瞬間に立ち会うことが出来たなら、それは、「幸せ」と呼べる。今まで自分が立ち会ってきた、あの空白に、やっと名前をつけることが出来た。

私にとっての、『四月は君の嘘』は、そういう作品だ。

めくったページ。繰り広げられる何かに驚いて、息が止まる。その空白の一瞬のあと、理解することになるのだ。自分は、「音」に立ち会っていたのだと。

漫画が視覚だけの媒体だとは思わない。そこに書き込まれた擬音や、登場人物のテンションからBGMやSEなど、様々な音を「知る」ことは出来る。しかし、本作は違う。ページをめくった瞬間、脳裏に「音」がよぎる。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番 クロイツェル。モーツァルトのきらきら星変奏曲。サン=サーンスの序奏とロンド・カプリチョーソ。
そのほとんどが知らない曲だ。それでも何か聞こえる、ような気がする。そして、気づく。あぁ、「音が視え」ているのだ、と。

母の死をきっかけに、ピアノを弾くことをやめてしまった元天才少年・有馬公生と、個性的な演奏をするヴァイオリニスト・宮園かをは出会う。正確無比に、作曲家の意思を再現することを求めるコンクールで、母の要望通り、完璧な演奏をし続けてきた有馬と、楽曲を自分のものであるかのように弾く宮園。
誰のために演奏するのか。なぜ、演奏しようと思うのか。型どおりのコンクールの中で、演奏する自分を見つけようとする彼らに、鳥肌が立った。

創作の受け手としての私たちが、空白の瞬間に立ち会えることは幸せだ。そして、その空白は、創作の受け手ではなく、作り手として立ち会うことも出来る。無我夢中で、何かを追い求め、周囲の風景や、音、声、全てが吹き飛ぶ一時。
彼らが、求めているのは、もしかしたら、そういうものなのかもしれない。
切ないラブストーリーの中で演奏される情熱的な演奏を見る一時を、体感できる幸せを噛みしめながら、読んでいこうと思う。

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)

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四月は君の嘘(2) (月刊マガジンコミックス)

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