【雑記】「怒る」と「叱る」を混同すること~「あなたのために」「みんながそうだから」と言ってしまう人々~

少し前に、「帰れ」と言ったら、バイトが帰ったという記事を読みました。「若者叩き」としてのエピソードとしては、かなり偏ったものだと思っていたのですが、テレビを見ていたら、同じようなエピソードが取り上げられてて、定番エピソードにでもなってるんだろうかと。
「モンスター新人」と名付けられた新人たちのエピソードをいくつか観ていたら、少し思うところがあったので、メモ書き。

一見、やる気なさそうに仕事場にいるバイトや新人に、「帰れ」と言う。「常識的に」考えると、檄を飛ばすための言葉として、「帰れ」と言っているんですよね。帰られた上司としても、本当に帰ってほしいわけではないと思うんです。
しかし、上司の命令に従わないと怒ってくるのに、実際に、「帰れ」と言われたから、帰ったら怒られた。これ、ダブルバインドなんですよね。

「帰れ」と言われて……
帰る→怒られる。次会ったときの上司の機嫌は最悪なはず。
帰らない→帰らないので、まだ怒られる。謝ったとしても、お互い気分はあまり良くない。

どちらにしても、上司の機嫌を損ねるような気がします。実際に、自分が言われたらどうかなーと少し考えてみたのですが、帰る勇気はちょっとない。でも、「この人は、自分の発言に責任持ってないな」という判断はくだすと思う。たぶん、今後その人の話は話半分で聞くんじゃないかな。曲がりなりにも命令権を持っている人間なのに、考えなしに、感情的に怒っているようにしか見えないんですよね。自分に人に命令を出すことの責任感やその重大さをわかっているのかなと、疑問を持ってしまう。しかも、日本って、「明日から来なくていいよ」というクビ宣告があるわけじゃないですか。その「帰れ」が、「クビ」と捉えられる可能性もあるだろうし。
もちろん、人間は発言のすべてに責任を持てるわけではないですよ。でも、だからって、持っている権力を全く自覚せずに、命令にも近い発言を安易にすべきではないとも思うんです。

「あなたのために」「ここまでしてあげてるのに」の質の悪さ

「怒る」という行為は、往々にして「叱る」と混同されがちです。

おこ・る【怒る】
[動ラ五(四)]《「起こる」と同語源。感情が高まるところから》
1 不満・不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す。腹を立てる。いかる。「真っ赤になって―・る」
2 よくない言動を強くとがめる。しかる。「へまをして―・られた」
おこる【怒る】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

しか・る【叱る/×呵る】
[動ラ五(四)]目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる。「その本分を忘れた学生を―・る」
しかる【叱る/呵る】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

両者の最大の違いは、「よくない点を指摘する」ということがあるか、どうか。本来、上司から部下への態度は、「叱る」が正しいはずです。腹を立てたという態度を見せて、脅しにも似た強い言葉で、相手の気持ちを萎縮させ、行動を制限させることではありません。あまつさえ、その「怒り」を充てられた部下の言動の揚げ足を取ったり、「だから、若い世代は」と決めつけ、同年代や年上との酒の肴にすることでもないはずです。

このような「怒る」という態度には、「あなたのために指摘してあげている」という思いがあるのではないでしょうか。だから、実際に、思いを汲み取ってもらえなかったり、指摘したことを無視するような態度を取られたときに、不満を抱いてしまう。実際に、時間も誠意も割いていると思うので、そう考えるのもしかたのないことなのかもしれません。それでも、自分の発言の影響力や、相手の反応含めて、すべて、「そういうものだ」と受け入れること。そして、どうすれば、相手に自分の意図や気持ちが伝わるのかを考える。それが、「叱るもの」としての誠意なのではないでしょうか。

また、「あなたのために指摘してあげている」という思いは、「裏切られた」と思うことにも繋がります。ここまでしてやったのに、相手は感謝もしていないどころか、恩を仇で返してくる。そう思ったことがある人もいるでしょう。しかし、「元より相手のためになっていたのか」「相手は、恩を感じていたのか」ということを考えることをも放棄しているのと同じなのではないかな、と。

本来、「叱る」という行為は、相手の成長のためにすることです。ですが、その指摘した欠点は、本当に欠点なのか。自分の不快な思いを示すためにやってはいないか。そのようなことを、微塵たりとも考慮しない「怒り」になってしまわないよう、配慮をすることも必要だと思います。

「私がそう思う」を、「将来、あなたが困る」「周りの人が不快に思う」に言い換えること

これも、上記に似たようなものですが、叱る際に、「私は良くないと思う」と言えない人っていうのは、最終的な責任を持ちたくない人なのではないかなと考えてます。
「あなたに言われたから」
そう言われることを避けるために、相手の不利益をちらつかせたり、多数が自分の意見の味方であることを主張して、自粛を求める。脅しにも近いものだと思うんですけどね。まぁ、「私が良くないと思うから~」と言うのも、場合によっては、嫌われるかもしれません。とはいえ、具体的に存在しない他人に責任を仮託したり、恩着せがましいことを言ったりしてくるよりは、誠意ある言い方を模索出来るのではないかと思います。
「自分は、まぁ別に気にしないけど……」と、言葉尻濁すのも同じようなものですね。周り、もしくは対象に察してくれと言っているようなものです。

余談ですが、「人前で、声を荒げて怒る」というのは、周りの人からの目を利用して、自分の怒りの正統性をアピールしているように見えます。また、相手に恥をかかせることを厭わない人って、相手の嫌がることや萎縮することを平然とやる人なんじゃないかな。こういう人に会ったら、そういう風に警戒しても損はない気がします。


私自身は、バイトや学生サークルの上下関係しか持ったことしかありませんが、それでも、自分の発言が、年下相手に大きく影響を及ぼすことがあると知ることはあります。逆に、先輩に、大きな指標を示してもらったことも。
その中で、自分の言葉が、相手に指摘をする・叱るに留まらず、怒りを帯びてしまったこともありますし、相手に対して、脅しにも似たような言葉を投げつけてしまったこともあります。「目をかけていたのに、裏切られた。酷い。」そう言葉を投げつけるのは、簡単です。それでも、一歩踏みとどまって、相手がどうして、そのような言動を取ったのか。こちらの非は、本当になかったのか。そう考えることって、自分の立場を簡単に脅かせない年下相手だと特に放棄してしまうように思うんです。
これから、10年、20年と経ったときに、「これだから、若い世代は」と言うような大人になりたくない。そう考えたときに、何がやれるか。「叱る」という行為を、きちんと誠意と責任を持ったものとして、認識し直すことなのではないかなと思います。

【感想】【BL漫画】 たなと 『スニーキーレッド』~殺伐暴力から芽生えるのんびりとした生活~

スニーキーレッド (Feelコミックス オンブルー)

スニーキーレッド (Feelコミックス オンブルー)

殺伐とした始まりから、ほんのりとした愛が芽生える瞬間が好き。
男女であろうが、女女であろうが、殺伐とした愛って萌える。それが、男男だと、暴力が交わったりして、ドキドキする。
ついでいえば、猛獣っぽい攻めと、気圧されながらも懐柔しちゃう受けが好き。

そんなことを思っていた矢先のたなと先生『スニーキー・レッド』です。
とりあえず、ボコり愛が好きな人は、こちらの試し読みへどうぞ。

【大注目新人】たなと先生[スニーキーレッド]お試し読み【10/25発売】|onBLUE編集部BLOG
「とんだ変態野郎じゃん」

平凡なフリーター・三崎は
タチの悪いヤンキー・釧路に執拗に狙われる日々を送っていた。
会えば顔が腫れるまで殴られ、ウンザリするばかり。

しかしその一方で、三崎の体は
釧路からの暴力で興奮に震えるようなっていく……。
そんな三崎の変化に気づいた釧路は、ある日彼を暴力的に犯して――?

ドSヤンキーとドM平凡のボコり愛ラブ!

このあらすじで、この帯ですよ。即購入しました。
あらすじ以外で言うと、攻め(ハル)が「年下」なのが、すごくツボでした…!!暴力ふるったり、相手の家に押しかけたりしちゃうのに、受け(三崎)に「さん」付けで、仲良くなるにつれて、敬語を使うようになるんですよ……。しかし、その微妙な気の遣い方をまったく察してくれない三崎さん。猛獣が、天然猛獣使いにあやされてしまっているわけですね。


ここからは、ネタバレもいれつつ、軽く感想を。
ヤンキーっぽさを振る舞うハルが、「なぜグレてしまったのか」を、直接的に描かれないんですよね。家庭環境であったり、大学の環境だったりは描写されるけれども、それらは、ストレスの溜まる対象でしかなくて、排除しても、遠ざけても、彼のフラストレーションを解消しえない。ハルは、ヤンキー仲間のことが好きでつるんではいるんだろうけれど、大学にいなければ、とも考えていたと思うんですね。だから、課題も真面目にこなすし、引っ越し資金を貯めている。彼は、グレているのでも、自分の将来を放り出しているのでもなく、ただ、ヤンキーと優等生の壁に挟まれて、「ストレスが溜まっていた」のではないかなと。

「いい子」じゃないと、輪に加えてもらえない。
「ヤンキー」でないと、仲間ではない。

そんな板ばさみの中で、出会った三崎は異色の存在だった。まともな社会に属して、真面目な人たちの中で働き続けているにも関わらず、暴力的な行為に目を輝かせて、期待してしまう。そんな彼の許容範囲の大きさに、彼は自分の居場所を見出すことが出来た。愛称で呼ばれて、抱きしめてもらうことを、ハルは、ずっと求めていたように思うんですね。ひとりの青年のストレスが解消され、救われていく様が、暴力を伴いつつも、緩やかに描かれていく。

殺伐としたボコり愛から、穏やかなボコり愛までを描いた『スニーキーレッド』。とても面白かったです。

『サムライフラメンコ』最終回によせて~これは「愛」ではなく、「愛と正義」の話だ。

20161220 追記
記事の存在すら忘れていたけど、某スケートアニメの感想を見ながら、この記事を書いたことを思い出した。当時、よく見かけた感想をそのまま使っているとはいえ、差別用語が記事内に堂々ぶら下がってしまっていることを今さらながら恥を覚えたため、一部用語を変更しました。不適切な用語を使用し、長年放置してしまい、申し訳ございませんでした。

サムライフラメンコ』最終回にて、男同士の恋愛が描かれていたと話題になっている。

突き詰められた男同士の友情が、どうせまた性愛っぽいと受け止められたのだろうと思っていたら、正義が、1話からサムライフラメンコの理解者であり続けた後藤さんに「結婚してください!」と叫んでいた、全裸で。私もまた叫んだ。しかし、いちいち巻き戻すことなどしない。伝説のキスシーンと個人的に名高い『No.6』6話から3年が経ち、私もまた湧き上がる情動をリモコンにぶつけることは止めるようになった……。こんなことで、大人になってどうしようというのだろう。しかし、そろそろオリジナルBL作品を手掛けることをノイタミナには望みたい。2014年の枠は、埋まってしまったらしいので、2015~16年に絶大な期待を寄せる。

さて、しかし、正義のプロポーズとその後のやりとりが、ただの「恋愛的感情が結実したから結果」として、解釈されてしまうのは、釈然としない。正義が目覚めたのは、性愛ではなく、ヒーローの師たる要さんや、マネージャーとして彼の活動を支え続けた石原さんが説いた「愛」だと思うのだ。

実際、彼は、あの熱烈なプロポーズ以降、彼に一度も触れていないのですよ。もうちょっと、熱烈に抱きしめたり、キスしたりしていてもいいだろう。男の子同士の友情を重んじていた『No.6』でさえ二回もキスしていたのから、彼らだって、ハグぐらいしてもおかしくない、はず。せめて、正義が、あのへたり込んだ、後藤さんの色気にあてられる素振りとかあってもいいのでは。

それまでにも、それっぽい描写は、まぁまったくなかったとも言わないのですが、性愛的な描写かと言われるとまた違うのかなと。少なからず、後藤さんには彼女がいて、彼女を愛する後藤さんを正義は友人として応援していたのではないかと思う。

悪を倒す「正義」から、敵と対話する「愛」へ

では、なぜ、正義は、後藤さんにプロポーズしてしまったのか。自身の気持ちが、「愛」だと確信したのか。
そのために、『サムライフラメンコ』全体を振り返ってみましょう。『サムライフラメンコ』は、全部で5編で構成されていると考えています。

1~6話 サムライフラメンコ誕生編→マナー・ルールを説く大人らしい大人
7~10話 キング・トーチャー編→仮面ライダーのようなピンヒーロー
11~16話 フロム・ビヨンド編→戦隊ヒーロー
17~18話 フラメンコ星人編→宇宙の概念を書き換えるヒーロー
19~22話 澤田灰司編→ヒーローではなく、個人として成し遂げる正義(愛)

ここは、本題ではないので、ざっくりと書きますが、澤田灰司が指摘するように、サムライフラメンコはあらゆるヒーローを成し遂げた存在です。悪役の動機も、悪への憧れとか、生物の進化とか、大体は抑えている。仲間との協力も、上層部からの裏切りも、後藤さんと正義の仲違いなど、シチュエーションも網羅。18話「宇宙でフラメンコ」では、「フラメンコ」という単語の意味も明かされ、最終回を迎えたようと言われていましたよね。

実際、19話からは、「正義をやり尽したヒーローは、どうしたらいいのか」ということを描いた、エピローグ的なものだと思うんですね。ここでのキモは、「キング・トーチャー編」で正義が危惧し、しかし扱えなかった、「相手が人間だったら」という葛藤の解消です。かつて、サムライフラメンコとして説教をかました、実在する中学生・澤田灰司に、正義はどう向き合えばいいのか。

これまでの敵たちであれば、それなりに対話をして、お互い、「戦うこと」をノルマとして納得していた節があるけれど、灰司は違う。彼の動機は、普遍的な悪の信念ではなく、サムライフラメンコそのものであり、「正義」を執行して、倒す(社会的・生命的な抹殺)ことでは救えない。だから、正義は悩む。彼を倒す、もしくは、自分が死ぬでは、問題を解決したことにはならない。そう考える中で、要さんや石原さんが説いた「愛」は、「正義」に代わる、新しい悪への向き合い方なんですね。

その結論に至って、正義は初めて、悪との対話と受容を試みることが出来る。これは、サムライフラメンコでは出来なかったことで、羽佐間正義という個人に課せられた新たなノルマだと思うんですね。灰司に詰め寄る正義が、全裸なのは何とも彼らしいなと。関係ないけど、「パンツを脱ぐ/脱がない」で作品を評するアニメ監督の方々を思い出しました。それぐらいしないと、人に熱意って伝わらないよねー。(ほんとか

喪失感を埋め、あなたを救うための「愛」

さて、そんな熱烈な愛の提示のあとの、例のプロポーズについて。灰司と対話をするには、「正義」ではなく、「愛」を持たなければ向き合えないと描きましたが、これは後藤さんに対しても同じだと考えています。普遍的な「正義」ではなく、個人に向き合うための「愛」が必要。というかですね、誕生からずっと理解者であり続けてくれた人が、心の拠り所を失って、「ひとりになっちまった!」とか言ってるのに、「結婚しましょう!」も言えないで、一体誰が救えるんだ、と。果たして、そいつはヒーローと言えるのか。そういう話ですよ。

後藤さんという人は、高校時代の彼女が行方不明になってからずっと、喪失の痛みを避け続け、ついでに言えば、今も彼女に操を立てて、童貞でい続けている人なんですよ。それは、彼の生活に正義が入り込んだ後も、ずっと変わっていなかった。何度も正義の家に上がって、カレーを食べたり、特撮ヒーロー観たりして、一緒に過ごしてきたのに、後藤さんの喪失感は全く埋まっちゃいなかったのです。あまつさえ、アイドルのまりが、思いを寄せてきていて、しかも、居候までしているという据え膳状態なのに、まったく手を出してない。

それなのに、「僕は、あなたのことが好きです」とか、「これからも、僕が一緒にいるから、あなたは一人じゃないんです」なんて、正義にはとても言えないんですよね。何かしらの責任をとって、自分の存在を、後藤さんの喪失感を埋めるものに発展させなければならない。そう考えたときに、彼が参照するものは、あくまでも自分が見続けてきたヒーローものなのではないかと思うんです。その中で、結実した愛の形として「結婚」という言葉を提示するのは、至極自然だなと。「お前に何がわかるんだ」と責められて、ぐっと詰まって、どもりながらもこれしかないと確信する正義は、おバカだけど、眩しく映る。これを、愛だと呼ばずに、何を愛だと呼ぶんだ!と(笑)

こうして、「正義」をやり尽したヒーローが「愛」を獲得する。それが、『サムライフラメンコ』のエピローグだと思います。そして、「愛」は、地球や宇宙を救わないけれど、自分の大事な人の個人的な問題を解消し、救うことが出来る。これが、「キング・トーチャー編」での、「人間が敵になってしまうこと」や、キング・トーチャーの「ヒーローは孤独だ」という言葉に対する回答なんです。それは、ビヨンド・フラメンコが、「お前と俺が似ている」理由にも通じるのではないかなと。もし、後藤さんが灰司を殺していたら、サムライフラメンコはビヨンド・フラメンコのようになっていたのかもしれない、と。
あらゆる悪の可能性を、正義の心と愛の力で薙いでいく。『サムライフラメンコ』は、そんな物語だったのだろうと思います。

同性愛/異性愛の書き分けについて

恋玉コレステロール

恋玉コレステロール

補足として、『サムライフラメンコ』の同性愛の描き方についてです。本作のヒロイン・まりが所属するアイドルグループ・ミネラル★ミラクル★ミューズの関係性って、後藤さんと正義の関係を読み解くヒントになるのではないかなと。彼女たちの関係はこんな感じ。

まり→ヘテロ。女の子とキスするのに抵抗はない。他の二人が同じぐらい好き。
みずき→ヘテロ。まりと萌のイチャイチャには、ちょっと引いてる。アイドルとしてのまりに惚れてる。
萌→ビアン(?)まりに崇拝と言っても差支えないほどの好意を持つ。キスにも積極的。みずきのことは、二番目に好き。

BL的関係性ばかりに目を奪われていましたが、彼女たちの絡みも濃い。まりが、自分にはない「かっこよさ」を持っているくせに、自分を好いてくる萌を全力で拒絶するシーンとか、生々しいんですよね。

で、後藤さんと正義の関係性というのは、「萌とまり」というよりは、「みずきとまり」に近いものだと思うんですね。先にも書いたように、正義は、「愛」が何かはわからないけれど、わからないなりに、覚悟と儀式を伴う「結婚」という言葉を選んだけで、萌のような好意は示していない。だから、性的に好きかはわからないけれど、これからも一緒にいるし、辛いときは支え続けるということかなと。それは、みずきのスタンスでもあり、正義の得た「愛」の形でもある。

サムライフラメンコ』の最終回では、確かに熱烈なプロポーズが見られた。一見突飛なアイデアに思えるそれは、ヒーローである正義の歩みと振り返りに支えられたものであり、そこには私たちが計り知れない「愛」が詰まっている。そんなことを思いながら、最終回のプロポーズシーンを見返しています。

【感想】新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.52 『パテマ・いろは・ハル・ヨヨとネネ』観てきました!

新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.52パテマ・いろは・ハル・ヨヨとネネ! スクリーンで観たい劇場アニメ | WEBアニメスタイル
に行ってきました!『いろは』『ハル』は初見、『パテマ』と『ヨヨネネ』は、一度劇場で観ていた作品でした。
『パテマ』と『ヨヨネネ』は、スクリーンで見るべきアニメだと思うし、これはもう行くしかない!と意気込んで、参加。男女比が9:1ぐらいだったのかな。ちょっとビクビクしてました(笑)
今回は、4作品の紹介(ネタバレなし)と、トークショーの概要を少しばかり。
以下、4作品が上映される前の『パテマ』監督の吉浦康裕さんと、アニメスタイル編集長・小黒祐一郎の会話を箇条書きにしたものです。時間の半分は、質問コーナーだったのですが、トークと質疑応答どちらも混ぜ込んで書いています。ご了承ください。

  • パテマの作画は人物含めて、すべてCG。キャラクターも、一方がアオリ、一方が俯瞰で描いてたりするので、むしろ、CGを使わないと描けない。手書きにこだわる人ももちろんいるが、『パテマ』の際は、作画監督の又賀大介さんが馴染んでくれたので、やりやすかった。
  • 狭い空間を妄想するのが好き。イヴの時間の喫茶店、パテマの地下空間、アルモニの教室など。これらもパースとか意識すると、CGだとわかる。
  • 芝居にこだわりがある。『アルモニ』『イヴの時間』を初めとして、ひたすら喋らせることが多い。『パテマ』も台詞が実は多い。
  • 『アルモニ』は、教室の空気を生々しく描いた。スクールカーストの下位層(当時は、そこまで意識されたものでもなかった)だったので、その時の「教室で大声出すと、鬱陶しがられるけど、オタクはオタクで楽しい雰囲気」を出してみたかった。学園モノは、教室や学校の外側が描かれることが多いので、教室と廊下以外はあえて描かなかった。
  • 『アルモニ』の主人公の部屋に『パテマ』のポスターが貼ってあるのは、部屋に奥行を出すため。それと、主人公が好きそうなアニメというイメージはあったということと、同じ監督が手掛けているというアピールもついでに出来ればという意図(アピールしないと、同一人物と思ってもらえない)があった。それ以外に、特に深い意味はない。
  • それまで作っていた作品を、作家性として強く押し出そうとは考えていない。一度作ったら、違う形でやることを考える。狭い空間に世界を広げることが、発想の基盤。
  • 今度は、庵野秀明的爆発をやりたい。(小黒さん「作家性の爆発ってこと?」という発言を受けて)いえ、「爆発シーン」ですね。『王立』みたいなものがやりたい。
  • (同時期に公開されていた『アップサイドダウン 重力の恋人』についてはどう思われたか?という質問に対して、)プロデューサーから聞いて、Webサイトを見て、すぐパソコンを閉じた。見たら、影響されてしまうと思った。配信動画の公開は、こっちが先だったから、一応言い訳は立ったと思っている。ただ、今だに『アップサイドダウン』は、観れていない。
  • イヴの時間』は、いずれ続編を出したい。ただ、ファンは、完成されたストーリーを求めていると思うので、ハードル高い。(小黒さんの「小説で出せば?」の発言に)いいかも!小説は書ける。
  • イヴの時間』配信時代は、何をやっても新海誠の後追いと言われた。(でも、新海監督のおかげでやりやすくなったところはある。) 『イヴの時間』制作時は、これで世に出てやるという情念があった。
  • TVシリーズは、制作進行方が合わない。自分の作品は、いずれも中編なので、長編がやりたくなったら、1〜2クールやりたい。
  • 実は、今新しい企画が動いている。『アルモニ』も何らかの形で世に出そうと思う。
  • 小黒さん「吉浦監督は、会うまで変な人だろうと思ってた。(作品がそう!)でも、会ったら、まともだった」

こんなところですね。メモを取っていなかったので、覚え書きです。「影響を受けたSF作品」を聞かれて、以下の作品を挙げていました。

映画

作家

小説

  • 1984年*1

『パテマ』の「治安警察」や「歩く歩道」は、アシモフから影響を受けているとか。押井守監督の『パトレイバー』の名前もあがっていました。

ここからは、4作品の感想を。ネタバレはないです。


サカサマのパテマ
映画『サカサマのパテマ』オフィシャルサイト

夜明け直前の“空”を見上げる少年、エイジ。

彼の住むアイガでは、「かつて、多くの罪びとが空に落ちた」と“空”を忌み嫌う世界であった。そこに、突然現れた“サカサマの少女”。彼女は、必死にフェンスにしがみつき、今にも“空”に落ちそうである。彼女の名前はパテマ。地底世界から降ってきた。エイジが彼女を助けようと手を握った時、彼女に引っ張られるように二人は空へ飛び出した。恐怖に慄くパテマと、想像を超える体験に驚愕するエイジ。この奇妙な出会いこそ、封じられた<真逆の世界>の謎を解く、禁断の事件であった。

その頃、アイガの君主イザムラの元には、「サカサマ人」があらわれたとの報告が届く。イザムラは、治安警察のジャクに捜索を命じるのだった…。

人は誰しも、空に帰りたがっているのかもしれない。この作品を見て、そんなことを思いました。
落ちる、という感覚は人間の根源的な恐怖の一つだとするなら、飛ぶということは人間の根源的な欲求の一つだ。人類の歴史を鑑みると、私たちはいつだって、どこか想像もつかないぐらい遠くへ行くことを望み続けている。
多くの英雄が、物語に帰還を要請される。だから、飛ぶということは、落ちることとセットになっている。飛んだまま、というのは、冒険の失敗を意味することなんですよね。見たこともない世界へ大きな翼を広げたあとは、その翼をたたみ、地上へ落ちなければならない。多くの恐怖と、失敗への不安がつきまとう飛ぶという行為に、人は魅せられ、挑戦し続けてきた。
浮遊と落下はそのまま、希望と絶望に直結している。王道ボーイ・ミーツ・ガール、サカサマのパテマが描くのは、浮遊と落下の末にたどり着いた希望だ。

主人公・エイジとヒロイン・パテマが、お互いに「サカサマ」なので、カメラがぐるぐる回る異色アングルに度肝を抜かれました。観ているうちに「空に落ちる」感覚がリアルに感じられて、そわそわとしてしまう。初見時は、池袋のシネ・リーブルだったので、高いところからの景色を見て、空の広さが妙に怖くなりましたね。SFは、今、観ている世界を変える力を持っていると思うのですが、『パテマ』は、まさしくそういう作品だと思います。
「上に浮く」 シーンを見て、「落ちる!!」と思う作品を見ることは、そうそうないはずなので、もうこれだけでも観に行った甲斐がありました。


花咲くいろは HOME SWEET HOME
「劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME」公式サイト

祖母の経営する温泉旅館“喜翆荘”(きっすいそう)での住み込み生活にもすっかり慣れた、東京生まれの女子高生・松前緒花は、板前見習いの鶴来民子や仲居見習いの押水菜子らと過ごす毎日の中で、少しずつ変わっていく自分に気が付きはじめていた。
秋も深まってきたある日、クラスメイトでライバル旅館“福屋”の一人娘である和倉結名が、喜翆荘に女将修行にやってくる。
奔放な結名に翻弄されながらも面倒をみていた緒花は、掃除をしていた物置の中で、あるものを見つける。

P.A.WORKSが、2011年にTVシリーズとして放映していた作品を劇場アニメ化した作品。小黒さん曰く、今回のラインナップは、新進気鋭の制作スタジオや若手監督と呼ばれる人たちの作品で揃えているが、『いろは』だけは、老練された監督と制作スタジオだそうで。
同時に観ることで、改めて実感するところですが、格段に「上手い」という印象を持ちました。他の作品が拙いわけでも、面白くないわけでもない。むしろ、粒ぞろいといってもいいぐらい。それでも、『劇場版花咲くいろは』は、格別に上手い。
短い時間の中で、緒花・皐月・翠の四十万三世代だけでなく、菜子、民子のエピソードも盛り込んでいる。これが可能だったのは、脚本を担当した岡田麿里の時間と土地の描き方の上手さと、監督・絵コンテを手がけた安藤真裕のカットのおかげだと思います。カットの上手さに関しては、こちらの記事が詳しいです。
「花咲くいろは」 フレームの中の世界を探ってみよう - subculic

今作で、特に印象的だったのは、部屋の外、廊下や建物の外から部屋の中を映すようなカット。さらに廊下の外側から映るカットなんかもありましたね。これによって、ひとつのカットで、何人ものキャラクターの動きが把握できるようになっている。ひたすらに快楽性が高いんですよね。ニヤニヤしながら、観てました。

脚本でいえば、皐月が「輝きたいから東京に出たい」というのと、緒花が「東京にいるけど、輝いている気がしない」というのは、面白いなと。辻村深月夜想のインタビューで、「ファンに、辻村さんの作品は、東京に出れば変わると書かれていることも多いですが、元々東京に住んでいる人はどうすればいい?と聞かれて、その場では何とか答えたんだけど、心に残った質問だった」みたいなことを言っていたのですが、それを思い出しました。
親元に戻ってきて初めて、親心がわかる。皐月も緒花も同じような経験をしているから、話にも説得力が自然と出てくる。今回、緒花と菜子シーンには、グッときました。あれは仕事が忙しい親を持つ菜子に共感しているのもあるのですが、それ以上に、彼女が辛抱強く家族に向き合い、輝く姿に心打たれているから、緒花は走れるんですよ。ああいう、話作りをされたら、こちらも涙腺を決壊させることしかできないですよ。
いい映画を見たなーと、素直に感服させられる一作でした。

ハル
劇場中編アニメーション『ハル』

「くるみに、生きていることを思い出させるために、ボクは人間になった」
ハルとくるみの幸せな日常。
いつまでも続くと思っていた日々は、飛行機事故で突如終わりをつげた。
けんか別れのまま、最愛のハルを失い、生きる力も失ってしまったくるみ。
彼女の笑顔をとりもどすため、ヒト型ロボットのキューイチ<Q01>は、ハルそっくりのロボハルとしてくるみと暮らすことに。
ロボハルの頼りは、かつてくるみが願い事を書いた、ルービックキューブ
色がそろうごとに溢れてくる、くるみの想いに応えるため、ロボハルが奮闘するも、くるみはかたくなに心を閉ざしたまま。
ロボハルを作った荒波博士、そして京の街の人たちに助けを借りながらも、ロボハルは、人について、そしてくるみについて知っていく。
少しずつ打ち解けるロボハルとくるみだったが・・・。

新進気鋭のスタジオ・WIT STUDIOが『進撃の巨人』の傍らでこんな良作を作っていたとは 、と驚きました。
あらすじからもわかるように、「取り残された者を慰撫する物語」なんですよね。苦しいことがある人生でも、愛しい人や嬉しいことがあるから、あったから生きていくことが出来る。観ていて、『あの花』や『ピングドラム』を思い出したりして。
今作の最大の魅力は、アンドロイドでトラウマを取り除くのではなくて、ヒロインのくるみのクリエイティブ性がトラウマ解除のきっかけとなることなんですよね。人を魅了するようなモノを作るヒロインというと、『東のエデン」の森見咲や『ガッチャマンクラウズ』の一ノ瀬はじめ辺りが浮かびますが、彼女たちの能力って、ストーリーの展開において、そこまで重要なものではないんですよね。二人とも、そのクリエイティブ性の高さで他の人に影響を与えるんだけれども、キャラ付けの領域で収まっているように思う。一方、『ハル』は、最後まで日用雑貨や服飾小物をつくることを重要なものとして描いている。
先日、
地味清楚系だと思って結婚した嫁の金遣いが荒かった
という増田エントリーと、それに付随した、
ケチな男は結婚するな - しろぐらまー
という記事が話題になっていたんですけど、『ハル』が描いているのって、まさにこれだと思うんですね。視界を彩るような日用雑貨を使用することは、誰か一人の人生を豊かにすることが出来る、と。増田の指摘するように、それはお金にならないし、貯金額の面でいえば貧乏なのかもしれない。けれど、もっと違う豊かさを手に入れることができる。愛する人の喪失を経験して、笑わなくなった人間が、生活を彩る小物をきっかけに、愛する人の思い出に包まれながら、生きることを思い出す。

くるみは、人の思い出のつまった小物を集めるのが好きで、さらにそれを「リメイク」することができる。彼女は、慰撫される立場にありながら、服にボタンをつけたり、外部記憶装置の破損を直し、デコレーションしたりすることで、人間の感情がわからないロボハルの心や身体を、優しさで覆っていく。そして同時に、ハルとの思い出を思い返し、救われていく。
モノと思い出が溢れかえる空間で、ひとつひとつ組み合わされていくルービックキューブが意味を作り出して行く。観ていて、じんわりとする作品でした。

魔女っこ姉妹のヨヨとネネ
魔女っこ姉妹のヨヨとネネ

徳間書店発行のコミック雑誌「月刊COMICリュウ」で連載され、大塚英志の事務所「物語環境開発」のキャラクターデザイナーとして知られる、ひらりんのオリジナルコミックス「のろい屋しまい」を原作とし、スターチャイルド×ufotableのタッグがおくる新作劇場アニメ『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』。
監督に平尾隆之、キャラクターデザイン・総作画監督柴田由香、副監督に高橋タクロヲといった強力スタッフが揃い、主人公・のろいや姉妹の姉のヨヨ役に諸星すみれ、妹のネネ役に加隈亜衣という期待の実力派若手キャストが作品を彩る。
さらに、声優・小松未可子がテーマソングアーティストとして参加し、音楽面からのアプローチによる作品表現という新天地に挑むことも話題となっている。
更なるスタッフ、キャストも発表となり、少しずつその全貌が明らかになりつつある、ufotable最新長編劇場アニメーション。魔女っ子アニメの原点回帰にして最新作たる、ファンタジックな世界に是非、ご期待下さい。

トークショーで、吉浦監督に、「同年代の監督としてスケジュール管理法を聞き出したい」とまで言わしめた一作。小黒さんも、「今まで見てきたアニメの中でもトップクラスに「動画が」いい」と絶賛していました。
2013年を通して、劇場アニメで宣伝PVを見る機会が多く、公開を楽しみにしていた一作です。2013年最後に観た劇場アニメが、『ヨヨネネ』だったのは、本当に嬉しかったですね。「生きててよかったー!!」とか、本気で言ってました。
魔法陣を指でクルッと描く(余談ですが、タブレットスマホを扱う手つきに似ているのが、印象的でした。) ヨヨの可愛さと、ネネちゃんの清楚えろさは底なしでした。「かけます、ときます呪い屋姉妹!」とハモる姉妹の可愛さに悶絶。いつ声がもれてしまうか心配するぐらいに、可愛かったです。4作品ラストということもあって、元気の出るド王道でした。こうして、4作品見比べてみると、改めて、わかりますが、キャラクターの動きが魅力的、快楽的。これに関しては、とりあえず観てください!とオススメいたします。
それ以上に詳しい感想は、すでに書いているので、こちらに譲ります。(ただし、ネタバレあり)
記事

以上4作品の紹介でした。
オールナイトでこんなに濃い4作品も見せられて、正直疲労困憊でしたが(笑)、本当に楽しい時間でした。アニメスタイルイベントにはどんどん参加したいですね。

*1:文脈的には、ジョージオーウェルの「1984年」だと思うのですが、「イチキューハチヨン」と仰っていたので、村上春樹の『1Q84』かもしれないです

【漫画】【感想】『四月は君の嘘』~空白のあと、音が視える幸せを体感しながら~

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)

妖艶で力強い彼女の後姿に息を呑んだ。
漫画の最大の弱点の一つを克服している。
音が視える。
森川ジョージ

空白。驚き。情報洪水。
創作の受け手としての私たちが、その瞬間に立ち会うことが出来たなら、それは、「幸せ」と呼べる。今まで自分が立ち会ってきた、あの空白に、やっと名前をつけることが出来た。

私にとっての、『四月は君の嘘』は、そういう作品だ。

めくったページ。繰り広げられる何かに驚いて、息が止まる。その空白の一瞬のあと、理解することになるのだ。自分は、「音」に立ち会っていたのだと。

漫画が視覚だけの媒体だとは思わない。そこに書き込まれた擬音や、登場人物のテンションからBGMやSEなど、様々な音を「知る」ことは出来る。しかし、本作は違う。ページをめくった瞬間、脳裏に「音」がよぎる。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番 クロイツェル。モーツァルトのきらきら星変奏曲。サン=サーンスの序奏とロンド・カプリチョーソ。
そのほとんどが知らない曲だ。それでも何か聞こえる、ような気がする。そして、気づく。あぁ、「音が視え」ているのだ、と。

母の死をきっかけに、ピアノを弾くことをやめてしまった元天才少年・有馬公生と、個性的な演奏をするヴァイオリニスト・宮園かをは出会う。正確無比に、作曲家の意思を再現することを求めるコンクールで、母の要望通り、完璧な演奏をし続けてきた有馬と、楽曲を自分のものであるかのように弾く宮園。
誰のために演奏するのか。なぜ、演奏しようと思うのか。型どおりのコンクールの中で、演奏する自分を見つけようとする彼らに、鳥肌が立った。

創作の受け手としての私たちが、空白の瞬間に立ち会えることは幸せだ。そして、その空白は、創作の受け手ではなく、作り手として立ち会うことも出来る。無我夢中で、何かを追い求め、周囲の風景や、音、声、全てが吹き飛ぶ一時。
彼らが、求めているのは、もしかしたら、そういうものなのかもしれない。
切ないラブストーリーの中で演奏される情熱的な演奏を見る一時を、体感できる幸せを噛みしめながら、読んでいこうと思う。

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)

四月は君の嘘(2) (月刊マガジンコミックス)

四月は君の嘘(2) (月刊マガジンコミックス)

【イベントレポ】円城塔×辻村深月対談~小説で”事件”を描くとは~

f:id:akabane55:20140302103829j:plain
第150回記念「芥川賞&直木賞フェスティバル」 | 特設サイト - 本の話WEB

東京国際文芸フェスティバルの一環である、第150回記念「芥川賞&直木賞フェスティバル」の円城塔×辻村深月対談 「小説で“事件”を描くとは」に行ってまいりました。今回は、そのレポートです。
立ちながらのメモだったので、不備や間違いがあるかもしれませんが、概ね聞いた通りに書いていると思いますので、お楽しみいただければ幸いです。

対談開始~きっかけは神林長平トリビュート!~

司会・辻村さん・円城さんの順で座られていました。
辻村さんは、可愛いジャンパースカートで右手には大きな飾りの指輪が!かわいかったー。円城さんは、途中でなぜかiPhoneを取り出していたのが印象的でした。
まず、司会の方から、二人の経歴の紹介。一回ずれで受賞されてるんですよねと、話を振られた、お二人から、「賞を取るまで」の話が!

円城塔(以下、円城) 芥川賞を取るまで、3回候補に上がったけど、他のどの賞よりも緊張します。受賞したときは、熱を出していて。ハヤカワの向いの喫茶店で待ってたんだけど、縁起も悪いし、こういうのは一人で待っているものだと聞いたから、ホテルに行って寝てました。起きたら、選考が始まってる時間で。
辻村深月(以下、辻村) 確か、『オーダーメイド殺人クラブ』のときに、円城さんと待ち会してたんですよね。そんなに知り合いがいるわけではないんですけど、待ち会で知り合いがいると気まずい。お互い気にしているのに、実際に会うと「賞取れたらいいね」なんて言ったりしています。先に、円城さんが取ってくれてホッとしました。そういえば、選考が出産予定日3日前で。
円城 それはもう、受賞したら、名前は直木にするしかないですよって、メールしました(笑)
司会 おふたりは、以前からお知り合いだったんですよね?
辻村 はい。この二人だと、接点がないように思われるかもしれないんですが、以前、神林長平さんのトリビュート*1に参加させていただいたときに、「面白い子がいるよ」って言われて、紹介してもらったんです。でも、円城さんは、「SF界の貴公子」だから、友達とは思ってくれないだろうって、思ってたんですね。
円城 そんなことはないですよ(笑)
辻村 でも、大阪でサイン会があったときに、たまたま見つけて立ち寄ってくれたんです。
円城 そう、たまたま大阪の書店に行ったら、サイン会がやってたんですよね。それで、挨拶に行きました。

小説の中で事件を起こすこと~リアルからリアリティあるフィクションまで~

司会 そろそろ本題に入らせていただきます。テーマである「小説の中で事件を起こすこと」についてお話をいただければと思います。
辻村 事件というよりも、円城さんにお聞きしたいのですが、発想どこから来ていますか?
円城 「ホラ」ですね。あと、怒られないようにしています。
辻村 誰に怒られるんですか?
円城 親とか(笑)実際に心配されてしまいますから。そういえば、震災後に『オーダーメイド殺人クラブ』が候補にあがっていて、何かありませんでしたか?
辻村そう言われると、確かにそうですね。中学生の女の子が世の中に絶望しちゃうところから始まるので。そういえば、私、円城さんのエピソードで特に好きなのがあるんです。円城さんが、小説家になるって言ったら、お母さんに「ナルシストも大概にしなさい」って言われたって。それを聞いて、流石、円城塔の母親だなーと思いました。ウチは、読んでても、スルーしているので。ケンカになりそうだから、読まないでって言ってます。でも、たまにボロが出るんですよね。「私は、『ツナグ』が好きだな」とか、「また怖いやつだ」*2って言われたりします。『鍵のない夢を見る』で、「育児ノイローゼ」の話を書いたら、友達から電話がかかってきて。
円城 あの構想は、いつからあったの?
辻村 あれは、産まれる前に構想していたものなんです。産まれたら、虐待する人の気持ちがわかると思って。でも、産んだら虐待がわからなかったんです。なので、育児ノイローゼや、誘拐に書き換えました。
円城 現実をそのまま書いても事件にならないですよね。自分の人生を公表したい、と相談されたりするんですが、確かにすごいんだけど、劇的過ぎて話にならないんです。劇的であれば、あるほど書きづらくなってしまう。お話の中に漏れ出るようにしないと、自伝や伝記にはなるんですけど、フィクションにはならないです。
辻村 剥き出しのままのリアルと、こういうことが起きそうだというリアリティは違いますよね。明日起きてもおかしくない、起こりそうなことを探していかないと、フィクションにはならないですね。
円城 僕は、自分の書いているものがよくわからないものなので。僕は、人があまりリアルに死んだりする必要がないんです。やるならオーバーキル、バトロワまでやります。按配がうまくつかめない。ミステリはどうしても言われるじゃないですが。
辻村 ミステリも、北村薫さんや、同期の米澤穂信くんの、「人の死なないミステリ」があるんですよ。頑張って、死なないミステリを書こうとした『鍵のない夢を見る』は、ミステリ呼ばわりされないんですね。直木賞取るとまともなものに見えてしまう。大人が勧めるものになってたまるか、と思います。大人が勧めたものって、面白くないって先入観があって。なのに、大人になって読んだら面白くて。面白いものなのに、大人が進めてくれたおかげで読むのが遅れたじゃないかと、腹が立ったり(笑)
円城 僕の本を大人が子供に進める図が想像できない。
辻村 SF右翼じゃないですか。子どものうちから、英才教育ですね。
円城 教養的ですね。SFファンに育てようと。
辻村 教科書に載る円城塔ですね。直木賞を受賞して、読んでくれる年齢層は広がったと思います。私は、一生中二病として書いてるんです。今も神林先生を読んでも、「これが神!」とか言っちゃうんですね。自分にもそう思ってくれる子がいて、なのに、遠くにいっちゃったなって思われるのは嫌ですね。
円城 読む層が広がってありがたいです。ただ、どう書けばいいか困っていますね。
辻村 屍者の帝国は趣が違いますよね。
円城 ゆえにまた混乱を引き起こすんですよ。何の人なのかわからなくて、困ります。
辻村 円城塔を読ませるかわからないんですが、『屍者の帝国』を読んでいるときに、子供が見ていたカトゥーンアニメで犬に電力流して生き返らせるシーンがあって、「お母さんも、今そういうの読んでて、それは人間しか生き返らせるんだよ、一緒だねー。でも、これは犬も生き返らせてて、すごいねー。」って子供に言ったら、夫に「やめろ」って(笑)
円城 事件を起こす題材って何がありますか。
辻村 ミステリは社会派とか、そういう言葉を使うまでもなく、人一人を殺してどうにもならなくなってしまうんです。現実の事件が起きる時も、何か最後の一撃で表面張力から零れてしまう。人を殺すまでのドラマ。自分の書きたい起きそうなことはそういうものなんです。人の死に寄り添っていくもの。大震災で、周りの作家さんでも、偽物の殺人事件を書き続けるという疑問に思う人がいて、大量死でなく、一人の死を一つの事件として扱う、一人の死に寄り添うヒューマニティとして、ミステリというジャンルが立ち直ってきたと思います。*3
円城 震災については、書き方に興味があります。「そろそろ震災を書かないか」という声はあるが、震災、大量死は話が大き過ぎて扱えないです。『想像ラジオ』などもあったけど、僕は形が作れない。書き方は気にしています。スケールの問題ですね。色んな方がいると思います。世界規模の話で、スケールの大きさに中々入り込めない物語でも、一人の人間にフォーカスするとリアリティが出てくる。屍者の帝国もそうで、個人のことを辿ることによって世界を理解できる。
辻村 歴史小説もそうですよね。歴史の教科書は苦痛だったんですけど、時代小説を読んだあとだと、暗記が進むんです。みなさんも経験あると思うんです。ノンフィクションの世界を背景に理解していく。
辻村 神林長平先生のトークショーで、確か、『僕らは都市を愛していた』の時だったんですけど、そこで、神林先生が、「人間は剥き出しの現実を理解できない」と言っていたんですね。人は、剥き出しの現実だけで生きられない。円城さんとお話していても、上のあの辺から見下ろしている視点みたいな自分を見ているカメラワークや、以前見た映画を思い起こしていたり、フィクションのフィルターを通しているんです。小説家という職業はそういうものだと思います。
円城 網膜や鼓膜はフィクション生成機ですよね。何らかの情報機器。
辻村 そうだと思います!
円城 網膜をもっと大きくすればどうなるか、とか考えます。
辻村 無意識に考えてることに、広げるようとするんですよね。
円城 小説といえば、登場人物を千人出したりして、別の形式をつくるとまた異なる理解が出てきます。こうやって、考え方や異なる概念を広げるんです。
辻村 そうするとと、無意識に広げていた人の元に届くようになるんですよね。
円城 歳を取って色んなことがわかるようになった気がします。
辻村 私もそう思います。例えば、円城さんと、こうして親しげに話すなんて、知り合ったばかりだと混乱して無理だと思います。
円城 歳を取るとわかることはあるんですよね。100までしか生きられないんですが。
辻村 「昔は、年を取ると、書けるものの幅が広がるよ」と言われても、反発する気持ちがあったんですね。「今だって書けているよ」という意地があったんですけど、無理なく理解できるようになりました。
円城 事件を描く舞台は選んでいるんですか?
辻村 最初の『冷たい校舎の時が止まる』が、学校。最近は遠くへ行くようになりました。そこにしようではなく無意識に選んでいる結果ですね。『オーダーメイド殺人クラブ』が直木賞候補に上がった時、審査員から「地方にいる人間の息苦しさが描かれている」と言われたんです。そこで初めて、自分が描いてるものが、「地方都市」だったと気づきました。賞にノミネートされると他者の視点が入るので、自分の立ち位置が確認できるんです。最近、『島はぼくらと』で、島の話を書けるようになりました。地元には海がなかったので、今まで書いてこなかったのですが、地方の延長として描くことが出来たと思います。
円城 ジャンルを広げることはしないんですか?
辻村 ずっとミステリ。ミステリの人としていたいですね。人が死なない事件であっても、解決の仕方は、自分が読んできたミステリからしか拾えない。ミステリ作家の書いた小説ですね、と言われたい。ミステリ的な回収だね、彼女、やっぱりミステリしか書けないとSFの人に悪口言われたい。円城さんはどうですか?
円城 年を取りたいですね。このまま行くと歴史小説とか書きます。信長とか。形式が変わると、書けることが変わるので。今、大阪にいますが、日本の見え方が違うんです。元々、北海道に住んでいたので同じかと思ったが、違いますね。
辻村 そういうところから得たことが、違う形で出て行くのでしょうね。「円城塔」がジャンルなのかも。全然違うことをやられても読後感が変わらない。円城塔が好きな人は、何を書いても円城塔が好き。
円城 作家はみんなそうだと思いますよ。僕は、他人の新作出しましたけど(笑)誰かのように書く、ということはしたくなりますね。死者が蘇る話だから書いたというのもあるけど。誰かの新作を勝手に書くということが、できないのが不思議です。個性というものは、ジャンルの壁よりも厚いと思います。どういうものを、フックにしていくか。
辻村 フックになるのが事件ですか?
円城 「書けなくなったときどうするか」を聞かれますが、「人に会いましょう」というのが答えですね。
辻村 「やっぱり、地方都市を書いている人なんだ」と、人から言われることで気づきます。『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』でノミネートされたときに、「小説家は人の不幸を描きたがるということに、誠実に立ち向かっている」という選評をいただきました。やっぱり、自分の書いてるものは、人に寄り添うものなんだって。自分のジャンルなども読んでいる人が決めて欲しいと思っています。
円城 幸せしかない小説は書きづらいですよね。幸せなだけの物語は誰も読まない。
辻村 ハッピーエンドではあってほしいでしょうけど、それは不幸なものを抜けた先の光ですよね。
円城 小説の中で得られる幸せって、いびつですよね。何がハッピーエンドなのかがわかりづらい。
辻村 自分が、OLだったことがあるので、日曜の夜に読んで陰鬱な気持ちで月曜に出社してほしくないなということは気を付けてます。
円城 その視点はなかったですね(笑)
辻村 本を閉じた翌日にあのキャラクターどうしているのかなと思い出してもらえると読後感がよかったのかなと思います。
円城 僕は寝てしまうと言われます。それなら睡眠薬として使ってもらえれば、幸せなのかもしれないですね。すごい薄い本なのに、最後まで読めない本。
辻村 寝てしまう(笑)
円城 トリックに使えますね。
辻村 この本で、眠っていたのかぁ!って(笑)

質疑応答コーナー~文学賞を取るとモテる!?~

司会 区切りもいいところで、質問をお受けしたいと思います。
Q1. お二人にとって、特に思い入れの深い作品はどれですか?
辻村 作品って、不出来なものも可愛いくて、どれも一つ一つ思い入れがあるのですが、やっぱり、今書いているものが一番可愛い。書き終わったものでいうと『冷たい校舎の時は止まる』です。高校時代から書いていたもので、付き合った期間も長いので。
円城 僕も同じですね。自分が何を書いたか忘れません?
辻村 私、自分が書いた子たちが本当に本当に大好きなので、何ページの何行のどこどこにこういうことを書いたって、覚えてるつもりなんですけど、びっくりするほど忘れますね。文庫にする際、三年前の企画を手直してて、たのですが、当時の私は、一体何をこんなに怒っていたのかと、直したくなります。でも、その怒りふくめて、共感してくれる人がいると思うと、直せないですね。
円城 僕、長期の記憶がもたなくなっていて、結末を忘れたんですよ。短編のオチが思い出せなくて。読んでみたらちょっと面白かった。「見どころのある青年だ」とか(笑)同じことを書いているのではないかという恐怖がありますね。一作の中でも忘れている人とかいますよ。出版されたものが一番よいに決まっている、と自分の気持ちを保つようにしています。

Q.2大学生活の影響も受けて、熟成したことはありますか?
円城 性格はあまり変わらないですね。大学に入って、色んなものが読めるようになりました。大学に長くいたせいもあって、大規模検索など、アクセスできる情報の規模が広がりました。外国語が読めるようになった感覚です。
辻村 実は、『冷たい校舎の時が止まる』は、受験勉強が嫌で仕方なくて書き始めたんです。センター試験が近く、1月の初めから二ヶ月で中巻まで書きました。今、この執筆スピードがほしいです。小説だけ自由に書けていた環境であれば書けなかったですね。やるべきことがあったから。小説だけ書ければいい環境だったら作家になってなかったです。大学で色んな人と会って多様だと思いました。
円城 高校の頃は殆ど本を読んでいなかったですね。大学から読み始めました。そこで、人格形成がされて、人間っぽくなりました。
辻村 私は、中高で読んだ本の貯金で生かされています。高校時代は、古典や名作を読んでいて、大学以降はリアルタイムの作家を追っていました。
円城 神林長平さんをまとまって読んだのが大学からですね。
辻村 意味がわかるようなったのがもう少しあとですね。
円城 そうなんですよ、わかんないんですよね。

司会 最後にお互いに聞きたいことをお伺いして、締めたいと思います。
辻村 聞きたいことでないかもしれないのですが、円城さんのイメージが、とにかく男にモテるんですね。芥川賞を受賞した際のお祝いの席で、皆、円城さんのお祝いなのに、「俺が好きな円城塔」について喋るんですよ。全部が「前カノ語り」みたいなもので。いつも、円城さん、その場にいらっしゃるのに、いないような感じを出していて。ああいうときどんな気持ちなんですか?というのをお聞きしたくてですね。
円城 元々、男に囲まれることが多いので、あまり違和感はないが、はっと思う時があります。ボンクラ男子学生、ボンクラ社会人しかいない! 放置しておくとダマになって遊んでいます。
辻村 一度何かの集まりのときに、一瞬人がいなくなっていて。何事かと思ったら、円城さんがプロットノートを持ってきてるって、円城さんの周りに集まっていたんです。そこで、「俺と同じことを書いている奴がいたなんて」と言われていて、それは違うんじゃないかなぁって(笑)結局、プロットノートは見れなかったんですが、円城さんの集まりにいくのは楽しみですね。本人が無頓着なのがいいです。
円城 高校生に「先に書かれた」と言われたこともあります。辻村さんは、モテるようになりましたか?直木賞は、モテるって聞きました。
辻村 全然ないです。
円城 上の世代で芥川賞を取ると、モテるらしいんですよ。「もう一回取りたい」っていう人がいるぐらいで(笑)
辻村 私もモテたいです(笑)「辻村先生の小説読んでる女子って付き合いにくそう」って、言われたんですよ。
円城 誰にですか?
辻村 SF評論家の方です。「愛人臭がしない」って。確かにと思いました。でも、逆にいい法則があるんですよ。私のサイン会って、男性も女性も半分ずつなんです。なので、私の小説のあの話や、ややこしい女を許容して、とても好きだと言ってくれる男性の方は、私の小説を読んでいるめんどくさい女を許容してくれるということだと思うんです。なので、モテるために使ってください。私の小説を渡して反応を見るんです。
円城 リトマス試験紙みたいですね。
辻村 新書を書くときがあったら、「私のこの小説のフレーズが理解できない男はやめておけ」と書きます。女の作家さんはストイックに生きている気がします。モテ格差などが気になってずっと書いていたんですよ。
円城 そこは気になるんですね
辻村 もちろん、気になりますよ。男の作家さんは賞を取るとモテるって聞きました。
円城 上の世代で、芥川賞取った方はモテますよ。聞いたんですけど、そのあと奥さんと別れた人がいるので、大変ですよ。でも、もう一度取りたいらしいです(笑)
司会 そろそろ時間になりましたので、締めさせていただきます。ありがとうございました。

辻村さん・円城さんがお辞儀をして、退場。

一時間弱の対談でしたが、二人の個性があふれ出た対談でした。聞いていて、とても楽しかったです。
最後のモテ談話の「辻村女子読者は、付き合いづらそう」から始まる一連の会話には、うなずきながら聞かせていただきました(笑)辻村作品をリトマス試験紙代わりにするのは、男性でも使えるのではないでしょうか。自分の感覚を強く言語化し、体系化する人に対する反応が見られるのが、辻村作品なのかなと、聞いていて思いました。
とても楽しいイベントだったので、また機会があれば、行きたいですね。

道化師の蝶

道化師の蝶

鍵のない夢を見る

鍵のない夢を見る

*1:こちらですね。

神林長平トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

神林長平トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

辻村さんの『七胴落とし』は、エッセイ集『ネオカル日和』にも収録されています。

*2:辻村さんの、「怖い」は少し特別なワードであるように思います。『夜想#少女』の今井キラさんとの対談「居場所への「希望」を描く」でも、自分たちのゴスロリ趣味を「怖い」と言われたことに断絶感を覚えたという話をしていましたね。

*3:輪るピングドラム 公式完全ガイドブック』の幾原×辻村対談でも、このことについて触れていましたね。ピンポイントに抜き出すことが難しいのですが、こちらでは、「震災以降の作り手の精神状態」について語られています。 余談ですが、私はこの一連の話を聞いて、『子どもたちは夜と遊ぶ』の浅葱を思い出して、泣きそうでしたw

『艦これ』から『進撃』まで!pixiv人気ジャンルの「人気順検索」比較

pixivがついに1000万ユーザー突破!ということで、おめでとうございます。そのキャンペーンとして今日まで「人気順検索」を無料会員にも開放しています。
普段検索しないジャンルも漁りに漁って、楽しんでいたのですが、ふと、人気ジャンルの投稿数とかブクマ数ってどれぐらい違うんだろう?と気になりました。

手始めに、前期・今期で大きく話題になった『キルラキル』を検索。
f:id:akabane55:20140228203600p:plain
投稿数・14346件、最大ブクマ数・13555件
2クールのアニメとしてはかなり多いように思います。


Fate/Zero』だと、投稿数が42868件、最大ブクマ数が30153件。元々、原作は小説で、シリーズなので母数が大きいのでしょう。
f:id:akabane55:20140228205104p:plain


2クールでオリジナルということで『PSYCHO-PASS』も調べてみる。
f:id:akabane55:20140228203655p:plain


どれも人気作品であることに変わりはないけど、二次創作としての傾向が色々伺える、面白い。というわけで、偏見は承知の上で、以下の条件を満たしたジャンルを「pixiv人気ジャンル」として設定し、人気順検索をかけてました。

条件
①2012年から現在までのランキングに入ることが多いと思ったジャンル(印象!)
②10万投稿数もしくはブクマ数が1万を超えているものがいくつかあるジャンル

Pixivが出来たのは、2007年。早いうちから盛り上がっている作品の方が投稿数が多いのはもちろんですが、最近盛り上がっている作品の方がブクマ数が上がりやすい傾向にあるように思いました。
とはいえ、そういうことをやっていたらまったく終わる気配がしないので、今回はそういう細かい分析は避けて、一言二言コメントをするに留めます。
順番は、原作が出た年代順に並べてあります。

オリジナル

f:id:akabane55:20140228203929p:plain
どこに入れるか迷ったので、最初に入れておきます。
一時期、「pixivは二次創作がひしめいていて、オリジナルの入る隙間はない」というような発言を見かけていたのですが、最近では『オリジナルランキング』も作られ、改善されているように思います。
ランキングカレンダーを確認するとわかりますが、初期のpixivランキングは、オリジナルがかなり多めです。

東方Project(1996年 第1弾東方靈異伝 〜 Highly Responsive to Prayers.発表)

f:id:akabane55:20140228204329p:plain
「東方」の方が投稿数多いので、こちらを採用。上位にメイキングが多いのが面白いですね。
※R18イラストのサムネが目立ったので、ここだけR18は非表示にしてあります。ご了承ください。

ヘタリア(2003年ウェブ連載開始 2008年 コミック発売)

f:id:akabane55:20140228204010p:plain
一時は、ジャンプ全体と同じぐらいのサークル数があったジャンル。日丸屋大先生による供給によって、日々が輝いていたあの頃。

VOCALOID(2004年11月『MEIKO』が発売)

f:id:akabane55:20140228204041p:plain
最古参ジャンルのひとつと言っても、過言ではないでしょう。上位は、ミクで大体占められていますね。もう少しで40万投稿数に届きそうです。

黒子のバスケ(漫画 2009年2号(2008年12月発売)アニメ 2012年4月~9月/2013年10月~)

f:id:akabane55:20140228204117p:plain
検索していて、特にブクマ数がすごかったのが、『黒バス』。この後、23ページの半ばまで、ブクマ数1万以上の作品が続きます。総計450作品ですね。頭が下がります。

進撃の巨人(漫画 2009年10月連載開始・アニメ 2013年4月~9月放送)

f:id:akabane55:20140228204627p:plain
こちらもスゴい。2013年5月半ばぐらいh、デイリーランキングの上位がミカサで占められていたような……。

うたの☆プリンスさまっ♪(ゲーム 2010年6月発売・アニメ 2011年7月~9月/2013年4月~6月)

f:id:akabane55:20140228204653p:plain
「キスよりすごい音楽って本当にあるんだよADV」。アニメ化の際は、高レベル作画によって再現された「ST☆RISH」の歌とダンスが話題を呼びました。しかし、本編にちりばめられたギャグのためか、pixivでの人気作品もギャグものが多いですね。

魔法少女まどか☆マギカ(2011年1月~4月)

f:id:akabane55:20140228204710p:plain
上位に集合絵が多いのを見ると、みんな5人で共闘シーンが見たかったんだろうなーとつくづく思いますね。『叛逆』の共闘シーンはテンションあがりました。

カゲロウプロジェクト(2011年2月シリーズ1作目『人造エネミー』公開)

f:id:akabane55:20140228204825p:plain
ニコニコ動画から始まり、小説、漫画と幅広い展開を広げる作品です。4月にはアニメ化するとか。根強い人気のおかげか、毎日ランキングで見ているような気がします。

TIGER&BUNNY(2011年4月~9月)

f:id:akabane55:20140228204839p:plain
どうしよう、まだ『The Rising』見に行ってないわー。一部のお姉さま方を熱狂させたバディ率いるヒーローアニメということで有名なような気がしますが、全キャラクターが愛されていることがわかるサムネ群。

艦これ(2013年4月)

f:id:akabane55:20140228204901p:plain
知らない人が、「女の子が脱げるのがいいんでしょ?」とか言っているのを、中破大破してるときのヒヤヒヤ感とか、申し訳なさとかハンパないんだから!!と思ってしまいます。

おまけ エルシャダイ

f:id:akabane55:20140228204939p:plain
前代未聞の発売前オンリーが開かれたエルシャダイです。流行った当時は、毎日ランキングで見ていたような気がしていました。

というわけで、「勝手にpixiv人気ジャンル人気順検索結果を羅列してみよう!」でした。